第3回情報デザインフォーラムを振り返って
第3回情報デザインフォーラムが去る3月27日に開催されました。
既にレポートや感想記事は出尽くしていますが、今更ながら私なりに振り返ってみたいと思います。
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増井俊之氏 (id:masui, @masui) の基調講演
講演内容は2009/3/4 ユビキタス時代のユーザインタフェースとして公開されていますので、その場で話された言葉を中心にメモ。自己紹介から始まり、開発した各種WebサービスやUbicomp(ユビキタスコンピューティング)について興味深いお話が聞けました。
iPhone
- 最初は何やらされるか知らなかった!教えてもくれなかった
- 予測変換を開発
- あまり好きじゃなかったけど最終的にアレになっちゃった
Apple Inc.
Webサービスの良いところ
増井のサービスの特徴
- ユーザ登録無し
- パスワード無し
- 単純で有用なモノを目指す
本棚.org
- Web上で情報共有
- 登録の敷居が低い(コメントは書かなくてもよい)
地図帳.org
- 特定の場所の地図帳を作れる
- マニアしか登録してくれない(笑
- 場所を登録するのが面倒なのだろうか?
- 本と違って、自慢にならないからだろうか?
IQAuth
- 画像なぞなぞ認証
- 画像がパスワード代わり
- 画期的なはずだが、お声がかからない(笑
- 本棚.orgで利用
なぞなぞ伏字システム
- ある順番でクリックすると表示される仕組み
FeedTV
- フィードをテレビのように眺める
- 「眺めるインタフェース」
- 「これはひどい」「あとで読む」
Lexierra
- ブラウザで文字入力
- 全ての変換をJSで実行している
- IMEがなくても日本語入力できる
- 絵文字も入力できる
- GMailでも使える
- 「fukei」で風景画像、「sakana」で魚画像が入る
- Gyazoと連動して変換画像を増やせる
等々。あと、「Webサービスとの融合」として
- サーバブログ
- @mixi_mocha(美釧 萌香、コーヒーメーカー)
- @ikisaki_kun (行き先表示ボード)
が紹介されたのが興味深かったです。今までにも、既存デバイスとコンピュータを連動させる例は数多くありましたけど、これほどリアルとネットが融合し始めたのは最近じゃないかなと。
このほかにもPhidgetsやGainer、Arduino等が紹介され、ハードウェア制御の敷居がかなり低くなってきていることを強調されていました。
ユビキタス=ユニバーサルデザイン
- いつでも/どこでも/誰でも
- 人間の能力の強化(e.g. 眼鏡)
- 直感的なシステム実現の基礎技術
- 小型コンピュータ
- ネットワーク
- センサ
- 操作手法の工夫
- 直感的にする工夫
- なめらかな操作性
- 可逆的/連続的
- 目的と操作のわかりやすい対応づけ (e.g. 自動ドア)
- 直感的にする工夫
富豪的UbiComp(従来)
- 特殊なセンサをたくさん利用
- 専用の家を建てたり
PMUC(Poor Man's UbiComp)
リモコン?
- 明らかな問題点
- ボタンが多くて機能が分からない
- 紛失しやすい
- 本質的な問題点
- 操作対象ややりたいことと関係ない方向に
- 直感的でない操作
直感的なCDプレーヤ
- 「置くだけ主義」による情報家電制御
- CDを置くだけで音が鳴る
直感的なデータ転送
- CDを挿すとコピーされて別のCDに焼かれる
- CD-ROMはセンサ/アクチュエータ!
障害者用レジ
- 数字左右硬貨の変換が不要
- GUIインタフェース
- 便利な道具は最初、障害者用と思われがち
PMUC用入力デバイス
Processing
- 増井氏の本の紹介(ビジュアライジング・データ ―Processingによる情報視覚化手法)
パネルディスカッション
- 最近の人には新しいものへの抵抗があるのでは?
- 冒険が必要
- ユーザーの要望ではなく開発者の創意で生み出す
- 自分の使いたくないものは作らない
- Appleでは同僚の反応が得られない。Googleは良い。
- 数万人レベルのユーザーテストでないと信用できない。
- SFCではどのような教育を?
- 学生と何でもいろいろ作りたい。
- 横の人が話そっちのけでひたすらデッサンしてるw
- 何も知らない人にすぐ使えるようなデザインとは?
- 人間学習してモノを使えるようになる
- ゼロから何か使えるようになるなんてあり得ない
- ちょっとの努力で使えるようになるのが重要じゃないか?
- イードの棚橋さん「見た目で動かない場合に標準化していく過程とは?」
- 新たなインタフェースの発明が必要。
- 発想の仕方は?
- 不便-面倒くさいと感じること
- 知識は必要(入力)
- 寝る(寝てる間に色々解けて出力できる)
- 例:釘を13本使うパズル
- IDEOのビデオ。数人が1週間で生み出すデザインより、一人が数年かけて生み出すデザインの方がいいと考えている
- 私(棚橋)はIDEOの手法を支持している。(ここで会場、凍り付くw)
オープンディスカッション
「隣の部屋に移ってくださーい」との指示を受け、どやどやと移動する一同。そこには酒・お茶・肉・野菜が所狭しと! あ、あれ?ディスカッションは?
立食パーティ形式でのおしゃべり会でした。学生7割、先生方2割、社会人1割といったところだったでしょうか。部屋の四方には学生さんたちによる研究成果がパネル展示されていました。
学生さんの話を聞いてみると
- とにかくペルソナ手法のカリキュラムが各校で定着している
- 有志がゼミに入ってHCDを学ぶ感じ(学校によるだろうけど)
という印象を受けました。
あと増井さんが「Processingは簡単だよ!子供でもできるよ!」と力説してた気がします。Processingもやってみようかなぁ。
お開き
つい学生気分になって片付けの手伝いなどしてしまいました。途中で断られました。
どうもこの後は関係者で打上げ会をして、帰りには電車内でパネルを使ったプレゼンが行われたらしいです。見たかったなぁ。
最後に
少々長くなりましたが、いかがだったでしょうか? 1ヶ月も寝かせてしまったので旬は過ぎているんですが、もったいなかったので…。
私の感想としては、開発者、教授、学生、デザイナー等がそれぞれの立場で教訓を得たり情報交換を行ったりして、面白いイベントだなぁと思いました。天才 vs. 集合知なんてシーンもありましたし。あと、本題とはちょっとずれちゃうんですが、最近の学生のUCDやペルソナ手法との距離の近さが新鮮でした。もう概念としては当たり前になりつつあるんですね。