とある歌い手の追憶

シャンテ後ろ姿(夜)
愛車「マツダ・シャンテ」とのお別れの日から1年が過ぎた。
その記憶は、輝きこそすれ、決して色あせることはなかった。
今の気持ちは、とても一言では言い表せないが、せめて「モーティヴ-原動機 0―リフュールド」の一節を流用して表現してみたい。


未だにいつ思い出しても”特別なカンジ”がする
今更 あれより古くても あれより新しくても だめだってわかる


お金が足りなくて 車検を取れなくなりそうになったり……
ディストリビューターが壊れて クルマ屋まで何キロも1気筒でなんとか走って行ったり……
笑っちゃうくらいスカスカのエンジンルームに 小さな原動機がポツンとぶらさがってて
その中で赤ちゃんのコブシくらいの頼りないピストンがふたつ カシャンカシャン往復して
キャブレターはコホコホ言いながら空気吸って
マフラーはポンポンポンポン空気吐き出して
すり減ったクラッチプレートがシャカシャカ回って
ロータリーディスクバルブがタパタパタパタパ開閉して
ひび割れたダッシュボードがビリビリ共鳴して
古びたハンドルの操作は ねじ切れそうで怖くて
シフトチェンジは ゴクンとした感触があって
柔らかくなったオイルは 大慌てで原動機を冷ましに かけずり回る


自分の心臓
自分の筋肉と同じくらいに
自分の体の一部なんだ…

さようなら、シャンテ。でも、ひょっとしたら、また、いつか…。
これ以上の気持ちは、今書いている小説に込めていきます。